降り止む雨

祖母がトイレに入ったことに気が付いた。深夜1時を回っているのに珍しい。以前同じような時間に、胃腸の不調により嘔吐したことがあった。その記憶が脳裏を過ったため、僕は夜更かしを咎められる覚悟で様子を伺いに行った。ところが祖母の返答は「眠れなかったから」というもので拍子抜け、否、安堵する。僕が心配したことに対し何度か「ありがとう」と言ってくれた。ただ。声が少し震えていた。薄明かりの中で目を押さえるのも見えた。泣いていた。

 

僕は就寝の挨拶を済ませ、急いで部屋に戻った。途端に涙が溢れた。こんなことで泣かせてしまう自分が情けなくて堪らなかった。普段どれだけ、素直な表現を避け、それどころか乱暴な態度で接していたか。幼少期と同じ反省・後悔を、なぜ未だに繰り返すのか。深く深く愛していても、伝わらなければ意味が無いとわかっているのに。お互い永遠に健やかではいられないからこそ、今を慈しむべきなのに。彼女の居ない未来で、笑って生きていけないかも知れないな。滅入る。