2022年初めのライブはDREAMS COME TRUEだった。

ツアーの起点は2021年秋に遡る。9月25日に予定されていた幕張公演が緊急事態宣言により中止となったために、初日が僕の誕生日にして僕の地元での公演になるという偶然が生じた。翌日の10日にはJR東日本の沿線火災で大慌て。まさか渋谷にいて(IC試験を受験した→落ちた)交通難民になるとは思わなかった。


疫病が蔓延する世界でエンターテインメントを続ける難しさ。2020年以降、大半のアーティストが苦慮してきたことだろう。

当然ドリカムも例に漏れないが、ここで彼らの意地を見た。感染症のリスクに鑑み、最小限の関係者による開催が強いられたが、彼らはその環境・条件を“利用”したのだ。


その結果が「ACOUSTIC風味」である。ステージ上にいるのは、ボーカルとベース以外に、アコースティックピアノ(兼サックス)、アコースティックギター×2、そしてDJという特異な編成。

普段なら大人数のバンドで鳴らす楽曲も、全く別な響き方をする。“聴かせる”アレンジが心地良くて、吉田美和の詩の世界にも意識が向きやすい。おまけに音質も優れている。

音を間引いたアコースティックサウンドであっても、あくまで「風味」だから、決して単調にはならない。奥行きが沁みるのだ。この絶妙な匙加減は、紛う方なきプロフェッショナルの仕事である。


こうして満足できているのは、極上の選曲があってのこと。

ドリカムの楽曲が元来持つ味の良さ。それを改めて確認する場になった。素敵なものは文字通り、素で適うのである。


「コロナのせいで」と悲観するのも構わないが、「コロナのおかげで」見られた世界があるのもまた事実。楽観できるなら、その方が健全だ。