To Your Majesty

日本列島には巨大台風。「数十年に一度」は使い古された感があっても、「過去に例が無いほど」と形容されるのは新鮮だ。文字通り「過去に例が無い」のだから、聞き馴染みがあっても困るのだが。それはさておき。


英エリザベス2世女王陛下が、去る9月8日に崩御された。96歳、在位70年。

日本に生まれ育った私は、英国の地へ足を踏み入れた経験も持たないけれど、女王の存在は“シンボル”として意識していた。ユーモアに富み、時にチャーミングでありながら、英国君主として強く美しくあった女王が好きだった。故に今は淋しくてならない。

親しみという点で個人的に記しておきたいのは、女王の自動車に対する情熱。90歳を超えても尚、愛車のレンジローバーを自ら運転されていた。鮮明に印象づけられている。


昨年から健康状態の悪化が顕著だったそうだが、それでも私の中では「さっきまでお元気だった」ように記憶されている。現に、亡くなる2日前にはトラス新首相の任命に当たられていた。「生涯を公務に捧げる」との宣言は、75年もの年月を経て果たされたのだ。


それにしても、国葬に至るまでの一連の段取りが、極めて円滑に執り行われたことに驚く。然もありなん。1960年代から「ロンドン橋作戦」が周到に練られていたと知れば、この芸術と言っても過言ではない最後の儀式にも頷ける。死去が公式に発表される直前、バッキンガム宮殿の上空に二重の虹が現れた運命も含めて。


画面越しではあれど、ウィンザー城へ向かう棺を見る度、実感が増して悲しみが募る。一つの命の終わり。一つの時代の終わり。こうしてまた、新たな歴史が描かれていく。

しかし私の中で「英国の顔」は、この先もずっとエリザベス2世女王であり続けるだろう。改めて、ここに敬意、そして弔意を示したい。


どうか安らかに。